2028/05/05 金曜日

-yukari-
我に返ったときには話しかけられた男子生徒は入り口に向かっていた所だった
「むー」
望月縁は恥ずかしがり屋だと周りは知れ渡っているので普段あんなことは口にされないのだが
「恥ずかしかった…」
大勢の前で喋るのはいいのだが自分について褒められると恥ずかしくなってしまう
「あっ!」
縁はここに本を返しにきており既にその目的を達成していることを思い出す
図書館棟を出るときに竜太を見るがやはり勉強しつつぼんやりとした何かと喋っている
縁はそれがなにか知っていた
しかし彼女は生徒会の仕事をするために学校に来ていたのでそれ以上の追及はまたとした
すこし贅沢な作りになっている生徒会長室に戻る
「あ、ゆか!やっほー」
なぜか部屋に先客がいた
「もー、七海?ここは自習室じゃないんだからね?」
テーブルには課題と思われし勉強器具とちゃっかり紅茶まで用意してある
「わかってるよー」
と七海は聞いていない様子で縁の分の紅茶を用意する
「はぁ…」
最近、私的に使っているように見受けられたが自身の為にここにいてくれる数少ない友人を怒る気になれなかった

-END-

わたしは呆れているゆかの分の紅茶を用意すると生徒会長席まで運ぶ
「どうぞ、生徒会長殿!」
椅子に座ったゆかが受け取り口をつける
「まぁまぁです」
出がらしだけどね
「なんでもいいけど、仕事の邪魔はしないでね?」
「わかってるよー」
ここは勉強するのにいい環境だと気づいてからたまに来ている
私は課題にキリがついたのでふかふかなソファに身を任せる
「ふぁー」
私が呑気に欠伸をしていたら目の前の課題を片付けられて書類と計算機をわたされた
「キリがついたなら手伝ってね?」
「おお、今日もゆかの愛が…厚いね…」
チラリとみると私の課題より骨のありそうだ
「全部終わらせなくてもいいから、収支の確認して、計算あってなかったら赤でチェック入れておいてね」
ゆかは仮想ディスプレイを3つほど表示させてすばやくキーを打ち込んでいる
この部屋を使っている理由の本命はこっちにある
謎の方法で1年生徒会長になったゆかは上級生に仕事を振りづらく結果多く抱えてしまっている
それを知ってからは彼女をなんとなく放っておけずに手伝っている
最初は私をアルバイトで来たんだと勘違いしたらしい
私もアルバイトの人に混じってやっていたのでしかたない
何人かいたが小遣い程度に稼げると皆来なくなった
生徒会の援助というアルバイトは決して楽ではない。ほぼ生徒会と同じことやっているのだから
でも私は報酬がでなくてもゆかが心配になった

「ええと、古川さん…でしたか?もうあなた達に任せる仕事はありませんよ?」
不思議そうにいった生徒会長に言ったんだ
「でもあなたは仕事に溢れてるんじゃない?」
すぐに笑顔を作り言い返される
「それが生徒会長というものですよ」
間髪いれずに言い返す
「あきらかに会長がやらなくてもいい仕事も抱えてるよね?」
私はよく会長の仕事ぶりを見ていたので知っていた
どう考えてもたまに見かける他の役員は余裕をもって仕事をしているが会長はそうじゃなかった
「で、でも…」
上級生に強く出れないのも知っていた
しかし、上級生も押し付けているわけではない
だから部外者の私が手を差し伸べた
「報酬は…これでいいよ!」
むりやり手を取り握手するように振る
「あなたっていう友達がいいな。だめかな?」
「だ、だめじゃ…ない…です」

これがキッカケだった

-XXX-

終わらせた課題を個人ロッカーに入れに管理棟の前を見る
「ん?」
記憶が正しければ生徒会室は3階だったはずなのだが
「電気がついてないな…」
「あ?」
右手から出てきたファディアがそちらの方を睨む
「よくわかるなぁ…」
「まぁ…なんとなくね」
窓から見える限りは人も見えない
「まぁいいか…」
その瞬間に音が消えた
「きやがったな!」
ファディアがファイティングポーズでその辺眺める
「そういえばファディアは戦えないの?」
「あぁ…人間よりはつよいぞ?」
「あぁそんなモンなんだ」
それにしても思ったことがある
「この…なんだ?この領域に入るのは分かりやすいんだけど…」
周りを見渡すけど全く怪物が見える気がしない
「なんとかなんないの?」
「わからん」
退屈なのかファイティングポーズはやめて地面に寝そべりだす

-airi-

「えっと…」
本を借りていたので図書館棟まで返しに来ていたが校内を移動しているはずの路線バスがこない
何の気なしに愛梨はデジタルフォンの時計を見る
「え?」
何故か圏外になっていた
「どうしたのでしょう?」
そこで気がついた
音が存在しない
愛梨は植えつけられた反射神経で真後ろから飛び掛ってきた人型怪物の攻撃を避ける
ベンチが破損して手荷物が散乱するがそれどころではない
「な、なんですか!?これ!」
異常な事態になればなるほどしっかりした対応が必要となる
そういうことに関してはしっかりと身に付けさせられていた
背を向け逃げ出すのではなく怪物を視界に入れつつゆっくりと後ずさる
「グアァァァァ!」
飛び掛ってきたらすかさず避ける
それの繰り返し
数回それを繰り返した時に怪物が勢いよく木に突っ込み倒れこむ
そこを見計らって荷物があった場所に向かう
「ええと、確かここに!」
カバンをひっくり返し底敷きを思い切りはがす
「よかった!ありました!」
そこには箱と…小さい銃-ダブルデリンジャー-があった
防火製の箱を開けて弾丸を2つ込める
「グウゥゥゥゥ!!!」
ポケットに入るだけ必要なものを入れてデリンジャーを構えるとこちらに走ってきていた
振り上げた拳をよけるとゼロ距離で発砲する
「グゥゥアアア!」
すこし痛そうに声を上げたがそれだけだった
「やっぱりデリンジャーだと時間稼ぎがせいぜいですね…」
出来るだけ距離をとる
近づいてくる怪物に再び発砲するがすこしだけ歩みを止めるのがせいぜいだった
弾を込めようと弾丸を取り出したときに怪物が突進していた
「くっ!」
とっさに弾丸数個を投げつけるがそれは焦りに捕らわれた行動だった
いとも簡単に弾丸は怪物に弾かれてしまう
左肩を殴られ凄まじい激痛が襲う
殴られた反動を利用して寝転がりながら距離をとる
「わたしも…まだまだですね…」
2個だけあった弾丸を込める
歯を食いしばり痛みをしのぐ
「…」
何かが飛んでいる音と鳴き声のようなものが聞こえた
音がまったくない世界で自分と怪物以外の音が聞こえた
思わずそちらに意識が向いてしまう
「グアァァ!!」
目の前にいた怪物の腕に発砲するがデリンジャーが弾かれてしまう
「クアァァァ!!!」
そのとき小さい何かが怪物に突進する
「グアァァ!」
怪物が吹き飛ぶ
「!!!」
口から火の玉のようなものが飛んでいき怪物がもがき苦しむ
そのようすをぽかんと見ていた愛梨の元へ飛んできた
それはカラスのようだったが色が赤い
目線を合わせると首をかしげる
「うん…大丈夫!ありがとう!」
愛梨は左肩に負担を掛けないように立ち上がる
それを見届けた赤いカラスは羽を羽ばたかせ再び怪物に突進する
「グルァァァ!!!」
くちばしで突かれ炎の玉を再び食らった怪物は地面に倒れこむ
「鳥さん!もういいよ!」
赤いカラスはその声に反応して愛梨のもとへ飛んでくる
「逃げましょう!」
走ってその場を離れた

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